環境への影響
貿易や投資の自由化を前提とする TPPでは、環境保護や気候変動対策などの国際的な課題よりも、大企業や投資家の利益が優先されています。そのため、 TPPでは環境保護はあくまで「努力目標」であり、何の義務づけもありません。第 20章「環境」には具体的な罰則や企業への責任追及を求める規定がほとんどないのです。
こうしたことを受け、アメリカやオーストラリアの NGOは、環境に悪影響が出るとの批判を強めています。具体的には、 .少なくとも 7つの国際環境条約について実効性ある規定を設けるべきであるにもかかわらず、触れているのはワシントン条約に関してのみ。 .違法に伐採された木材、違法に捕獲された野生生物等の貿易を禁じていない。 .IUU漁業(違法、無報告、無規制)への取り組みが十分ではない。 .フカヒレの貿易と商業捕鯨を禁じていない。 .「気候変動」という文言すらなく、低炭素型経済への移行は自主的な手段を促すにとどまっている、などです。
また、 ISDS条項も環境にとって大きな脅威です。すでに多くの自由貿易協定で起きているISDS提訴では、天然ガスや石油企業など、環境破壊に関わる企業が莫大な損害賠償を求めているケースが数多くあります。
ISDSは企業や投資家に有利に働くことが多く、提訴される国は途上国だけでなく、アメリカやカナダなどの先進国も含まれており、日本も他人事ではありません。脱原発や低炭素型社会への移行など、私たちにとって望ましい政策への変更も、「企業の利潤追求の障害だ」とされて訴えられる危険は十分にあり、そうした政策や規制を進めることを委縮させる懸念もあります。(内田聖子)
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