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2016年10月

2016年10月28日 (金)

外国企業が日本の公共事業を落札していく

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 公共事業については、第15章「政府調達」が関係してきます。「政府調達」では、国や政府機関、地方政府などが物品やサービスを調達したり、建設工事を行ったりする際のルールを定めており、TPPは国内企業と同じ条件を外国企業に与えなければなりません。

 一つ目の問題点は「使用言語」です。 TPPは英語を使うことを奨励していますが、これは事実上、英語の強制を意味しています。入札の際の書類の英語化が進むなど、相当のインパクトを生むでしょう。

 二つ目は、調達の「公正性の確保」です。これは「談合の排除」を意味します。日本は談合社会ですので、著しい影響が出てくるはずです。

 三つ目は、中央政府、地方政府、政府団体のほとんどすべての分野について、日本は最大級の市場開放を約束したことです。その結果、世界最大級の建設会社「ベクテル」や、資源開発会社「ハリバートン」などの巨大外国企業が、政府や自治体が行う公共事業などを落札していく可能性が高まります。日本の調達構造が変えられ、海外資本による地方経済への浸食が進めば、地域の建設業者や中小企業の倒産も避けられなくなるでしょう。

 また、日本の地方自治体では、地域経済の振興のために「中小企業振興基本条例」や「公契約条例」を制定し、地元の中小企業への発注を積極的に行うところが増えています。しかし、第9章「投資」では、地元から雇用や物品、サービスの調達を求める「現地調達の要求」を禁止しており、こうした条例ができなくなる恐れがあります。このように、TPPは地域経済の振興策や自治体主導の地域づくりの障害にしかなりえません。(和田聖仁)

2016年10月16日 (日)

著作権に関する問題

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 著作権に関してはアメリカの勝利であり、「知財の米国化」が進むことになるでしょう。アメリカの映画やアニメ、キャラクタービジネス、巨大IT企業などは特許・著作権料で15.6兆円(2013年)もの外貨を稼ぐ輸出産業。TPPでは、当初から著作権保護強化と厳しい罰則規定を求めてきたのです。

1)著作権保護期間の延長:日本では著作権の保護期間は作者の死後50年ですが、TPPで70年に延長されます。これによって、著作権保護期間が終了した作品を無料で共有したり、再出版して新たな文化価値を生み出す活動(青空文庫など)が大きな制約や打撃を受けます。日本の著作権料の国際収支は年間約8000億円の赤字で、年々拡大しています。保護期間の延長でメリットを得るのはディズニーなどの企業でしかありません。

2)非親告罪化:日本では著作権侵害は、著作者自身が告訴しなければ国は起訴・処罰ができない「親告罪」です。しかしTPPでは非親告罪化、つまり本人以外の第3者からの通報によって捜査可能となり、パロディや二次創作などの萎縮が懸念されます。日本政府は非親告罪化は「商業的規模の海賊版」「原作の市場での収益性に大きな影響がある場合」に限定するとしていますが、定義は曖昧で警察当局の判断次第です。しかも海賊版の取り締まりは、各国の法律順守や締約国同士の警察の連携によって十分対処できることで、非親告罪化の必要はありません。

3)法定賠償金制度:日本では著作権が侵害された場合、権利者の実損害のみを賠償金として求めることがほとんどで、金額は少額です。一方、アメリカでは法定賠償金という制度が存在し、実損害の証明がなくても、裁判所が懲罰的な賠償金を決められます(1作品で15万ドルまでの法定賠償金や弁護士費用も別途請求)。これが導入されれば知財訴訟が頻発、賠償金も増加し、結果的にコンテンツビジネスが委縮する危険があります。何よりも、訴訟社会であるアメリカの裁判文化を持ち込むことにほかなりません。(内田聖子)

2016年10月 6日 (木)

日本を狙う者たち

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 TPPの根本にあるのは、金融も国境の壁を取り払い、資金の流れを阻害することなく自由に流動させる新自由主義の思想です。シティバンクやゴールドマンサックスといった、ウォール街のメガ金融グループが主導する国際金融資金の流れを止めることは、さらに困難になるでしょう。

 こうした勢力が日本で狙っているのは、ゆうちょ銀行・かんぽ生命やJA共済などの資金、さらには年金(GPIF)、日銀マネー、企業の内部留保など、日本が戦後70年かけて蓄えてきた富です。2007年の郵政民営化のときの郵便貯金・簡易保険の資金流出と同じで、TPPはそのバージョンアップといえます。これらの資金が国際金融市場に流出すれば、日本社会の貧困化がより一層進むのは必至です。

 アメリカは第11章「金融サービス」をとても重視しています。最大の問題点は、金融危機に陥った際に、国民生活や消費者を守るために各国政府が行う金融安定化政策(マクロプルーデンシャル措置)を、事実上行使できなくなることです。1997年に起きたアジア通貨危機に対してマレーシアが行った「資本取引規制・固定相場制」や、2008年のリーマンショック後にアメリカで成立した「ドッド=フランク法(ウォール街改革・消費者保護法)」など、自国の金融システムを守る規制が、TPPの下では働かなくなるということです。アメリカ国内でも、金融危機が再び引き起こされる危険性が高まるという批判が出ているほどです。

 加えて、第17章「国有企業」の附属書では、日本だけが留保(例外)を出していません。政府は、日本政策金融公庫など国有企業をすべて民営化し、外国資本の傘下にしても構わないと考えているのです。(和田聖仁)

2016年10月 3日 (月)

かんぽ生命や共済はどうなるの?

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 第11章「金融サービス」では、金融の定義は「すべての保険、銀行、その他の金融サービス」とされ、「保険」が金融の一つに位置づけられています。「共済」という記述はありませんが、これまでのアメリカや業界団体の主張で「保険」に共済が含まれているのは明らかで、今後、共済に対する意見が寄せられることは十分想定されます。

 アメリカの狙いの一つ目は、日本国内での医療保険市場の拡大です。アメリカはかねてより、かんぽ生命や共済(JA共済、全労済、コープ共済、都道府県民共済など)に対して「民間保険会社より優遇されている」として、金融庁に対し、民間保険会社と同じように共済団体を管理・監督させるよう要求しています。保険会社と同様の基準で運営されれば、利潤第一の経営が求められ、どこの地域でもカバーされるユニバーサル・サービスや、非採算部門などは撤廃されることになり、加入者の立場に立った運営はできなくなるでしょう。

 二つ目の狙いは、共済団体が将来の給付のために積み立てている積立金を金融市場に還流させることです。郵政民営化による「かんぽマネー」が財界や機関投資家、海外投資家の運用財源となったように、共済団体の積立金運用を金融市場に還流させようとしています。

 これまでのところ、 TPP協定の中で共済について具体的な取り扱いは示されていませんが、アメリカは 1990年代から毎年のようにかんぽ生命や共済に対して規制強化を要求してきており、 TPPにおいても「米国側関心事項」として、保険(共済を含む)が位置づけられています。(橋本光陽)

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