脅かされる国民皆保険制度の存続
政府は、国民皆保険制度を支えている、薬の価格を決めるプロセスは変更されないと言っています。しかし、制度の枠組み自体は変わらなくても、これまでよりさらに「企業寄り」の運用に変わっていく恐れがあります。
TPP協定の第26章「透明性及び腐敗行為の防止」の附属書では、各国の薬の価格を決めるプロセスにおいて「透明で公正」な手続きを行うよう求めています。保険収載といって、新しい薬や医療機器を保険に適用する手続きを進める際には、「検討を一定期間に完了すること」や「手続規則、方法、指針を開示すること」を求めたり、製薬会社が不服を申し立てることもできるようになっています。
日米二国間の交換文書(サイドレター)にも、薬の価格の決め方について、外国の利害関係者が政府の審議会に出席することや、意見書を提出できることが定められています。今後、アメリカの製薬企業が「透明性」を盾に、利害関係者として影響を及ぼすようになり、発言力が今以上に強まっていくでしょう。外国の製薬企業の主張に沿う形で、薬の価格制度が運用されれば、実質的に価格決定プロセスが変わることになります。
さらに、「関連する将来の保健制度」(日本は国民皆保険制度)について「協議する用意があることを確認」したことも明記されました。いつから何を協議するかは書いていませんが、「協議する」という確約をさせられた形です。このまま外国企業の言いなりとなれば、国民皆保険制度が続いても内側から壊され、空洞化する危険があります。(寺尾正之)
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