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2016年9月13日 (火)

ISDS条項の危険性

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 ISDSとは「投資家対国家紛争解決( Investor State Dispute Settlement)」の略で、投資家が相手国の協定違反によって損害を受けたときに、仲裁申立てを行い、損害賠償を求めることができる制度です。わかりやすくいえば、外国企業が相手国の政府を訴えられるようになるということです。

 ISDSが貿易協定に入るようになった1960年代以降、約696件の仲裁申し立てが起きましたが、そのほとんどは2000年以降に起きたものです。問題は、公的な裁判所ではなく、私的な仲裁廷で仲裁されるという点です。仲裁人は多国籍企業をクライアントとする弁護士などが担当するケースが多く、訴える側の大企業に有利な判断をしがちなのです。

 特に有力な15人の仲裁人は、これまで公開された投資仲裁の55%に関与し、係争額40億ドル以上の事件の75%に関与していたことが判明しています。このような「仲裁ムラ」にとっての関心事が、公共の利益よりも、顧客である大企業や仲裁ビジネスの繁栄にあることは明らかです。

 例えば、アメリカの大手石油企業「シェブロン」とエクアドル政府との事件では、現地子会社が環境汚染を引き起こしたシェブロンに対し、エクアドル地方裁判所が損害賠償命令を出していました。ところが、仲裁裁判所は、エクアドル政府にこの判決の執行停止を命じたのです。地域住民の人権を救済するために、裁判所が損害賠償を命じるのは当然のことですが、仲裁廷はそれが投資協定に違反すると判断したのです。

 この事件では、仲裁裁判所が判決の執行停止をその国の政府に命じたことも問題です。近代国家では三権分立の下、政府は裁判所の判決に従わなければなりません。しかし仲裁裁判所は、その原則を破るようエクアドル政府に命じたのです。 ISDSが国家の主権を何重にも侵害することは明らかです。

 このように、その国の民主主義や主権を無視し、社会的弱者を救済することが困難になる点で、ISDSには根本的な問題があるのです。(三雲崇正)

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